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退去時ハウスクリーニング費用の相場と借主負担の考え方

賃貸から引越すとき、退去時のハウスクリーニング費用を「借主が全額払うのか」「そもそも払う必要があるのか」で迷う方は少なくありません。実際には、通常の使用でついた汚れの清掃は原則として貸主負担で、借主が負担するのは契約の特約が有効に成立している場合です。このガイドでは、間取り別・場所別の費用相場、誰が負担するかを決める民法と国交省ガイドライン、クリーニング特約が有効になる要件と無効になるケース、過大請求への対応、業者選びまでを整理します。

退去の全体的な段取り(解約通知の予告期間、退去立会いの流れ、敷金精算のスケジュール、原状回復の負担区分の総論)は賃貸退去の手続きガイドで解説しています。このページは、そのなかでも「クリーニング費用」に絞って深掘りします。

クリーニングが必要になる2つのタイミング

引越しに関わるハウスクリーニングには、旧居を明け渡すときの「退去時クリーニング」と、新居に入る前の「入居前クリーニング」の2つがあります。費用の考え方も、誰が負担するかも異なります。

1. 退去時のハウスクリーニング(旧居)

賃貸借契約に「退去時のハウスクリーニング費用は借主負担」とする特約があり、それが有効に成立している場合、旧居のクリーニング費用は敷金から差し引かれるか、別途請求されます。管理会社が指定業者で清掃を手配し、その実費や規定額を精算するのが一般的な流れです。特約がなければ、通常の使用による汚れの清掃は貸主負担が原則になります。

2. 入居前のクリーニング(新居)

新居側は、前入居者の退去時に管理会社がクリーニングを済ませていることが多く、通常は借主が追加で手配する必要はありません。長期空室だった物件や、引渡しから時間が経って気になる場合に限って、追加クリーニングを検討します。詳しくは後半の「入居前クリーニングを検討するケース」で扱います。

退去時ハウスクリーニング費用の相場

退去時のクリーニング費用は、間取り(部屋の広さ)によって大きく変わります。以下は空室にして依頼する場合の一般的な目安で、金額は地域・汚れの程度・依頼する業者によって前後します。実際の請求額は契約書の特約や管理会社の規定によっても変わるため、あくまで比較の起点として参照してください。

間取り 費用相場の目安 備考
ワンルーム・1K・1DK 2〜4万円 単身向けの標準的な広さ
1LDK・2DK 3〜6万円 広さに応じて上下する
2LDK・3DK 5〜9万円 水回りの数が増えると割高に
3LDK以上・70㎡超(ファミリー) 5〜10万円以上 戸建てや広い物件はさらに上乗せ

地域差もあります。都市部と地方では人件費や業者の相場が異なり、同じ間取りでも数割の差が出ることがあります。また、入居したまま(生活用品が残った状態)で依頼するより、空室にしてから依頼するほうが作業効率が上がり、料金を抑えやすい傾向があります。

場所別・項目別のクリーニング相場

間取り全体のパック料金とは別に、エアコン内部洗浄や換気扇の分解洗浄などは「オプション」として別料金になることが多い項目です。場所別に個別依頼する場合の目安は次のとおり整理します。

場所・項目 費用相場の目安 作業内容の一例
エアコン(壁掛け) 8,000〜15,000円/台 カバー分解・内部の高圧洗浄
エアコン(お掃除機能付き) 13,000〜25,000円/台 分解が複雑なぶん割高になりやすい
浴室 15,000〜25,000円 浴槽・床・壁・天井・換気扇
キッチン 15,000〜25,000円 レンジフード・五徳・シンク・床
換気扇・レンジフード 12,000〜18,000円 油汚れの分解洗浄
トイレ 8,000〜13,000円 便器・床・壁・換気扇
洗面所 7,000〜10,000円 洗面台・床・鏡・収納
水回り4点セット 40,000〜60,000円 浴室+キッチン+トイレ+洗面所
フローリング洗浄・ワックス 1万円台〜(10畳目安) 剥離+再塗布は面積で加算

退去時に依頼する場合は、これらを個別に足し上げるより「ハウスクリーニング全体パック」に含めるほうが割安になることが多いです。金額はいずれもレンジ(幅)で示しており、汚れの程度・築年数・繁忙期かどうかで実際の見積もりは変動します。

退去時のクリーニング費用は誰が負担するのか(民法と国交省ガイドライン)

費用相場より先に押さえておきたいのが「誰が負担するか」の原則です。ここを理解しておくと、請求内容が妥当かどうかを自分で判断しやすくなります。

改正民法621条 — 通常損耗と経年変化は原状回復義務の対象外

2020年施行の改正民法621条は、賃借人は賃借物に生じた損傷を原状に復する義務を負うと定めつつ、その損傷から「通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗(通常損耗)」と「賃借物の経年変化」を明確に除いています。つまり、普通に住んでいて生じた汚れや傷、時間の経過による劣化は、原則として借主が元に戻す義務の範囲外という考え方が条文で明記されました。

国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」

国交省のガイドラインは、原状回復を「借りた当時の状態に戻すこと」ではなく、「賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義しています。通常損耗・経年変化の回復費用は賃料に含まれるものとして貸主負担が妥当、というのが基本的な整理です。通常の清掃で対応できる範囲の汚れは、この「通常の使用」に含まれると考えられます。

このガイドライン自体は「妥当と考えられる一般的な基準」を示したもので、それ単体に法的拘束力があるわけではありません。ただし、賃貸トラブルの裁判や交渉で参照される実務上の目安として広く用いられています。したがって、退去時に「通常クリーニング費用を借主が当然に負担する」という前提は、特約がないかぎり必ずしも正しくありません。

原状回復費とクリーニング費は分けて考える

退去精算の請求では、原状回復費とクリーニング費が同じ明細に並ぶため混同しやすいのですが、性質が異なります。原状回復費は、借主の故意・過失や通常の使用を超える損耗(タバコのヤニで変色した壁紙、放置したカビ、ペットの引っかき傷など)を直すための費用で、その部分だけが借主負担になります。一方でクリーニング費は、次の入居者のために室内を清掃する費用で、通常の使用でついた汚れの清掃は本来貸主の負担です。

この2つを分けて考えると、請求内容が妥当かどうかを判断しやすくなります。たとえば「通常損耗の壁紙張り替え」が原状回復費として満額請求されていれば、経過年数を考慮して負担割合が下がるはずだと指摘できます。クリーニング費については、特約がなければ通常クリーニングは貸主負担が原則で、特約があってもその有効性と金額の妥当性が問題になります。原状回復費全体の負担区分の考え方は賃貸退去の手続きガイドで扱っているため、あわせて確認すると全体像がつかめます。

クリーニング特約の有効性 — 有効になる3要件と無効になるケース

実務では「退去時のハウスクリーニング費用は借主負担」とする特約(クリーニング特約)が契約書に入っていることが多く、この特約が有効なら借主が負担します。ただし、特約は書いてあれば常に有効というわけではありません。ここがクリーニング費用でもっとも争点になりやすいポイントです。

最高裁判例が示した考え方

最高裁の判例(平成17年12月16日)は、本来は貸主負担である通常損耗まで借主に負担させる特約について、借主に予期しない特別の負担を課すことになるため、その特約が明確に合意されていることが必要だと判示しました。この考え方をもとに、有効性は次の3つの要素で判断されるのが一般的です。

  1. 特約に客観的・合理的な理由があること(なぜその負担が必要かが説明できる)
  2. 借主が、通常の原状回復義務を超える負担をすることを契約時に認識していたこと
  3. 借主が、その負担について同意の意思表示をしていること(内容を理解したうえで署名・押印している)

有効になりやすい特約・無効になりやすい特約

上記を踏まえると、負担する金額や範囲が契約書に具体的に明示され、その金額が専門業者の清掃費用として妥当で、借主が説明を受けて同意していれば、有効と認められやすくなります。逆に、次のような特約は無効と判断されるリスクが高くなります。

特約の内容 評価の傾向 理由の一例
金額(例:2〜3万円)と負担範囲が明示され、契約時に説明・合意している 有効になりやすい 借主が負担を認識し同意している
「退去時の費用はすべて借主負担」など包括的で金額が不明確 無効になりやすい 負担範囲が不明確で借主に過度に不利
通常損耗・経年変化まで一律に借主負担とする 無効になりやすい 本来貸主負担の部分まで転嫁している
形式的に条項があるだけで説明も金額提示もない 無効になりやすい 借主の明確な合意があったといえない

消費者契約法10条との関係

借主が個人の消費者である居住用賃貸では、消費者契約法10条も関わります。同条は、消費者の権利を制限し義務を加重する条項のうち、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものを無効とするものです。通常損耗まで借主に負担させる特約が、この10条に照らして無効とされた裁判例もあります。特約の有効・無効は契約書の書きぶりや説明の有無によって個別に判断されるため、金額や範囲が妥当かどうかは契約書と実際の説明内容を確認することが大切です。

特約が有効でも金額の妥当性は別に問われる

特約が有効に成立していても、そこで定められた金額が専門業者の清掃費用として妥当な水準であることが前提になります。間取りに見合わない高額な金額が設定されている場合や、通常損耗の補修費までクリーニング費として上乗せされている場合は、金額の妥当性が争点になり得ます。請求を受けたときは、まず特約の有無と内容を確認し、そのうえで金額が相場の目安から大きく外れていないかを見ると、交渉すべき点が整理できます。有効性の判断も金額の妥当性の判断も、最終的には契約書と説明内容、実際の作業内容によって決まるため、明細と契約書を突き合わせることが出発点になります。

クリーニング費用が高くなりやすいケース

同じ間取りでも、条件によってクリーニング費用は上振れします。見積もりを取る前に、自分の状況が次のどれに当てはまるかを確認しておくと、金額の妥当性を判断しやすくなります。

  • 汚れがひどい箇所が多い(油汚れの蓄積、水垢・カビの放置、ヤニ汚れなど)
  • 喫煙やペット飼育で、通常の清掃では落ちにくい臭い・汚れが残っている
  • 繁忙期(引越しシーズンの2〜4月など)で業者の予約が集中している
  • 物件の近くに駐車スペースがなく、機材の搬入や駐車に手間がかかる
  • 広い間取りや戸建てで、清掃面積・水回りの数が多い

喫煙やペットによる汚れ・臭いは、通常の使用を超える損耗として借主負担と判断されることがあります。この場合の費用は特約とは別に原状回復の問題として扱われるため、負担区分の考え方は賃貸退去の手続きガイドもあわせて確認してください。

クリーニング費用を抑えるための具体策

費用を下げる方法は、依頼のタイミングと事前準備でかなり変わります。特約で金額が固定されている場合は下げられないこともありますが、自分で業者に依頼する部分については次の工夫が有効です。

  • 複数社で相見積もりを取り、作業範囲と料金を比較する
  • 繁忙期を避け、閑散期(5〜8月など)に依頼する
  • 退去前に目立つ汚れを自分で落としておき、作業量を減らす
  • 空室にしてから依頼し、作業効率を上げる
  • 水回り4点セットなどのパック料金を活用し、個別依頼より割安にする

ただし、有効なクリーニング特約で「借主負担○○円」と定められている場合は、自主清掃をしても規定額が請求されます。まず契約書の特約を確認したうえで、自分の裁量で依頼できる範囲について上記を検討してください。

節約の効果が大きいのは、繁忙期を避けることと相見積もりです。引越しシーズンにあたる2〜4月は業者の予約が集中し、同じ作業でも料金が上振れしやすくなります。日程に余裕があれば閑散期にずらすだけで数千円から数万円の差が出ることもあります。相見積もりでは、単純な総額だけでなく、含まれる作業範囲(エアコンや換気扇が別料金か、追加料金の条件は何か)まで比較すると、後から追加費用で膨らむのを防げます。安さを優先しすぎて作業範囲や補償が不十分な業者を選ぶと、結果的にやり直しや家財トラブルの負担が増えることもあるため、料金と条件のバランスで判断してください。

ハウスクリーニング業者選びで確認したいポイント

自分でクリーニングを手配する場合、料金だけで決めると、作業範囲の食い違いや追加料金でトラブルになることがあります。次の点を事前に確認しておくと安心です。

  1. 損害保険に加入しているか(作業中の家財破損への補償)
  2. 口コミ・評価の内容(件数と評価の両方を見る)
  3. 料金体系が明朗か(セット内容・追加料金の有無を書面で確認)
  4. 作業範囲を事前に書面で合意できるか(範囲外作業の料金も確認)
  5. キャンセル料の規定(引越し延期時の対応)

地域密着の業者と全国チェーンには、それぞれ柔軟さと均質さの違いがあります。どちらが優れているとは一概に言えないため、作業範囲と料金、対応の丁寧さを見比べて選ぶとよいでしょう。いずれの場合も、複数社の相見積もりが判断の基本になります。

マッチングサイトを利用する場合

個人事業主や小規模業者に依頼できるマッチングサイト(例としてくらしのマーケットなど)は、大手より料金を抑えやすい一方、品質や対応にばらつきが出ることもあります。利用する場合は、レビュー件数と評価、損害保険の加入、作業範囲と追加料金の事前確認、キャンセル規定を見て判断します。特定のサイトや業者の優劣を断定せず、複数の選択肢を比較する前提で活用してください。

自分でやるか、業者に頼むかの判断

退去時の自主清掃は、通常損耗を超える借主負担分を抑えたいときに意味があります。ただし、有効なクリーニング特約がある場合は、清掃してもしなくても規定額が請求されるため、まず契約書を確認するのが先決です。特約がない、または自分の裁量で新居側を整えたい場合は、下記のチェックリストを目安に自分でできる範囲を進めます。頑固な油汚れや水垢、カビが広範囲に及ぶ箇所は、市販の道具では落としきれないことも多いため、無理をせず業者に任せる判断も選択肢に入れておくとよいでしょう。

キッチン

  • レンジフード・換気扇の油汚れ(重曹・セスキ炭酸ソーダを使う)
  • ガスコンロ・五徳の焦げ付き
  • シンク・排水口の水垢・ぬめり
  • 冷蔵庫まわり・収納内の食品カス

浴室

  • 浴槽の水垢・皮脂汚れ
  • 床・壁の黒カビ・赤カビ
  • 排水口の髪の毛・ぬめり
  • 換気扇のホコリ、鏡のうろこ汚れ

トイレ

  • 便器の黒ずみ・尿石
  • 床・壁の汚れ
  • 換気扇のホコリ

居室

  • 窓・サッシ・網戸
  • 壁紙の汚れ(メラミンスポンジで部分的に対応)
  • 床・畳の掃除機がけと拭き掃除
  • 収納内のホコリ・カビ

引越し業者のクリーニングオプション

大手の引越し業者のなかには、提携するクリーニング業者を通じて、引越しと同時に旧居のクリーニングを依頼できるパッケージを用意しているところがあります。業者選びやスケジュール調整の手間が省ける一方、単独で依頼するより料金がやや高くなる傾向があります。

  • メリット: 業者選び・日程調整の手間が省け、引越し当日に旧居の清掃をまとめて完了できる
  • デメリット: 単独依頼より割高になりがちで、業者を選ぶ自由度は下がる
  • 退去日と引越し日が同じ場合は特に効率的

引越し費用そのものを抑えたい場合は、引越し費用の相場と節約のコツもあわせて確認してください。

クリーニング費用を過大に請求されたと感じたときの対応

退去精算でクリーニング費用が想定より高いと感じたら、感情的に交渉するより、内訳を確認して段階を踏むほうが解決につながります。ここではクリーニング費用に絞った対応の流れを整理します。退去精算全体の進め方や敷金返還請求の一般的な手順は賃貸退去の手続きガイドで扱っています。

  1. その場でサインせず、項目別の内訳と単価がわかる見積書・明細を出してもらう
  2. 通常損耗・経年変化が借主負担に含まれていないかを、国交省ガイドラインと照らして確認する
  3. 特約がある場合は、金額・範囲が契約書に明示され、契約時に説明・合意があったかを確認する
  4. 疑問点を整理して貸主・管理会社と交渉する(書面ややり取りの記録を残す)
  5. 話し合いで解決しないときは相談窓口を利用し、必要に応じて少額訴訟(60万円以下の金銭請求で使える制度)も検討する

交渉の前提として、退去時に撮った室内写真や、入居時の状態がわかる記録があると、通常損耗との線引きを説明しやすくなります。

退去トラブルの相談窓口

自分たちで折り合いがつかないときは、次の窓口に相談できます。役割や費用が異なるため、状況に応じて使い分けてください。

相談先 役割 利用の目安
消費生活センター(消費者ホットライン188) 消費者トラブル全般の相談・助言 まず相談したいとき。電話番号188で最寄りの窓口につながる
宅地建物取引業協会など 不動産取引に関する相談窓口 仲介・管理会社とのやり取りで困ったとき
法テラス(日本司法支援センター) 法的トラブルの情報提供・相談窓口の案内 法的な手続きを検討し始めたとき
賃貸住宅の紛争処理機関・弁護士会の相談 賃貸借の紛争解決の支援 当事者間で解決せず、第三者の関与が必要なとき

金額の請求で折り合わない場合の最終的な手段として、少額訴訟(60万円以下の金銭の支払いを求める訴えで利用できる簡易な制度)があります。利用の可否や進め方は、上記の窓口で相談しながら判断するとよいでしょう。

契約前・入居時にできる退去クリーニング費用の備え

退去時のクリーニング費用でもめないための対策は、退去のときより契約前・入居時のほうが打ちやすいものです。金額が固定されている特約でも、事前に内容を把握しておけば予算に組み込めますし、入居時の状態を記録しておけば退去時の線引きで有利になります。

契約前に確認しておくこと

  • クリーニング特約の有無と、負担する金額・範囲が具体的に書かれているか
  • 特約の金額が、間取りに対して妥当な水準か(相場の目安と照らす)
  • 「通常損耗も含めて全額借主負担」のような包括的で不明確な条項になっていないか
  • クリーニング業者の指定があるか、自主清掃が認められるか

金額や範囲があいまいな特約は、契約前なら質問して明確化してもらう余地があります。説明を受けた内容はメモや書面で残しておくと、後の交渉材料になります。

入居時にやっておくこと

  • 入居直後の室内(壁・床・水回り・設備)を日付がわかる形で写真に撮っておく
  • すでにある傷・汚れ・不具合を管理会社に伝え、記録を共有しておく
  • 入居時のチェックリストや現況確認書があれば、内容を確認して控えを保管する

入居時の状態を記録しておくと、退去時に「もともとあった汚れ」と「入居中についた汚れ」を切り分けやすくなり、通常損耗を超える借主負担を過大に見積もられるのを防ぎやすくなります。

入居前クリーニングを検討するケース

新居側は前入居者の退去時にクリーニング済みのことが多く、通常は追加手配は不要です。ただし、次のような場合は追加クリーニング(2〜5万円程度が目安)を検討する余地があります。

  • 長期間空室だった物件で、ホコリやカビが気になる
  • 引渡しから時間が経っており、入居直前の状態が不安
  • 前入居者のペット飼育跡や臭いが気になる
  • 中古マンションを購入し、引渡し前のクリーニング範囲を自分で確認したい

中古マンションの購入では、売主負担で引渡し前にクリーニングされるケースもあります。追加で依頼するかどうかは、内見・引渡し時の実際の状態を見て判断してください。入居時に室内の状態を写真で記録しておくと、退去時の原状回復の線引きにも役立ちます。

よくある質問

退去時のハウスクリーニング費用は誰が負担しますか?

通常の使用でついた汚れの清掃(通常クリーニング)は、原則として貸主(大家)負担です。国土交通省の原状回復ガイドラインでは、通常損耗・経年変化の回復費用は賃料に含まれると整理されており、改正民法621条でも通常損耗と経年変化は借主の原状回復義務の対象外とされています。ただし、賃貸借契約に「退去時のハウスクリーニング費用は借主負担」とする特約があり、その特約が有効に成立している場合は、借主が支払うことになります。特約の有効性には要件があるため、契約書の記載を確認してください。

クリーニング特約はどんな場合でも有効ですか?

常に有効とはかぎりません。最高裁の判例(平成17年12月16日)は、本来は貸主負担である通常損耗まで借主に負担させる特約について、その特約が明確に合意されていることが必要だと判示しました。この考え方をもとに、実務では、特約に客観的・合理的な理由があること、借主が通常の原状回復義務を超える負担をすると契約時に認識していること、借主がその負担に同意していること、の3点で有効性が判断されるのが一般的です。負担する金額や範囲が契約書に明示されず口頭説明もない場合や、通常損耗も含めて一律全額を借主に負わせる内容は、消費者契約法10条により無効と判断された裁判例もあります。金額の妥当性は契約書・物件・地域によって異なります。

退去時のハウスクリーニング費用の相場はどのくらいですか?

空室にして依頼する場合、ワンルーム・1Kで2〜4万円、1LDK・2DKで3〜6万円、ファミリー向け(3LDK以上・70㎡超)で5〜10万円程度が一般的な目安です。エアコン内部洗浄や換気扇分解などは別料金になることが多く、場所別では浴室1.5〜2.5万円、キッチン1.5〜2.5万円などが目安です。金額は地域・汚れの程度・繁忙期かどうかで前後するため、複数社の見積もりで確認してください。

エアコンクリーニングの相場はどのくらいですか?

壁掛けエアコン1台8,000〜15,000円が標準的な目安です。お掃除機能付きエアコンは分解作業が複雑になるため13,000〜25,000円と割高になりがちです。複数台をまとめて依頼すると2台目以降の割引がある業者もあります。引越し前後の繁忙期は予約が取りにくいため、1ヶ月前を目安に予約するとよいでしょう。金額は機種・汚れ・地域によって変わります。

自分で掃除すれば退去費用は安くなりますか?

安くなる可能性はありますが、契約内容によります。退去前の自主清掃で目立つ汚れを落としておくと、通常損耗を超える借主負担分(たとえばタバコのヤニやカビの放置跡など)を抑えられることがあります。ただし、有効なクリーニング特約で「金額○○円を借主負担」と定められている場合は、自主清掃の有無に関係なく規定額が請求されます。まず契約書の特約を確認してください。

ハウスクリーニング費用を過大に請求されたと感じたらどうすればよいですか?

その場でサインせず、まず項目別の内訳と単価がわかる見積書・明細を出してもらいます。通常損耗・経年変化が借主負担に計上されていないかを国交省ガイドラインと照らして確認し、疑問があれば貸主・管理会社と交渉します。話し合いで解決しない場合は、消費者ホットライン188(消費生活センター)や、宅建協会・法テラス・賃貸住宅の紛争処理機関に相談できます。金額の請求で折り合わないときは、60万円以下の金銭請求で使える少額訴訟という選択肢もあります。

マッチングサイトのハウスクリーニング業者は選んでも大丈夫ですか?

マッチングサイトは個人事業主や小規模業者への依頼窓口の一例で、大手より料金が抑えられる場合がある一方、品質や対応にばらつきが出ることもあります。レビュー件数と評価、損害保険への加入、作業範囲と追加料金の事前確認、キャンセル規定などを見て判断するとよいでしょう。特定のサイトや業者の優劣を一概に決めず、複数の選択肢を相見積もりで比較することをおすすめします。

入居前に新居のクリーニングは必要ですか?

賃貸では前入居者の退去時に管理会社がクリーニングを手配していることが多く、通常は不要です。ただし長期空室だった物件、引渡しから時間が経った物件、前入居者のペット飼育跡などが気になる場合は、追加クリーニング(2〜5万円程度)を検討する余地があります。中古マンションを購入する場合は、売主負担で引渡し前にクリーニングされるケースもあります。

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