パスポートの引越し住所変更ガイド
引越し時のパスポート住所変更は、結論から言うと原則として不要です。パスポートには現住所が印字されないためで、引越し後も同じパスポートを継続して使えます。本ガイドでは「不要な理由」と「逆に切替申請が必要になるケース(本籍地変更・氏名変更・通称併記)」を、外務省の旅券法解説に基づいて整理しました。
パスポートの住所変更が「不要」な理由
日本のパスポートに記載される項目は限定されています。記載項目を整理すると、住所変更手続きが不要である理由が明確になります。
パスポートの記載項目
- 氏名(漢字・ヘボン式ローマ字)
- 本籍地の都道府県名(市区町村は記載されない)
- 生年月日
- 性別
- 有効期間(5年または10年)
- 顔写真
- パスポート番号
現住所は記載項目に含まれていません。かつてのパスポートには「所持人記入欄」があり、任意で住所や緊急連絡先を記入できましたが、これは公的な住所証明ではありません。なお、2020年2月4日以降に発給されたパスポートにはこの欄自体がありません。所持人記入欄がある古い旅券をお持ちの場合は、引越しで住所が変わっても自分で書き換えれば実務上は十分です。
パスポートを身分証明書として使う場面での扱い
パスポートは公的身分証明書として国内でも使えますが、住所の記載がないため住所証明書類としては機能しません。住所証明が必要な場面(携帯電話契約・銀行口座開設・賃貸契約等)では、住民票の写し・運転免許証・マイナンバーカードなど住所が記載された書類が必要です。これらの住所変更は引越し後に別途必要になります。
パスポートの切替申請が必要になるケース
パスポートの住所変更は不要ですが、以下の記載事項に変更があった場合は、有効期間内でも新しいパスポートへの切替申請が必要になります。
本籍地の都道府県が変わった場合
本籍地はパスポートに「都道府県名」として記載されています。引越しによって本籍地の都道府県が変わった場合(例: 東京都→神奈川県)、記載事項の変更となるため新しいパスポートへの切替申請が必要です。同一都道府県内で市区町村だけが変わった場合(例: 東京都新宿区→東京都世田谷区)は切替不要です。
引越しと本籍地変更は別の手続きで、本籍地変更は住民票異動とは独立して行います。本籍地は転籍届を本籍地の市区町村役所に提出して変更します。引越しに伴って自動的に本籍地が変わるわけではありません。
氏名が変わった場合
婚姻・離婚・養子縁組・帰化・改名などで氏名が変わった場合、戸籍に記載された氏名とパスポートの氏名が一致しなくなるため、切替申請が必要です。海外渡航前にこの不一致があると、入国審査で身分証明と整合せず入国拒否されるリスクがあります。
通称併記の追加・変更
婚姻後も旧姓を仕事で使う場合などに、パスポートに旧姓や別名を「通称併記」する制度があります。通称併記の追加・変更・削除があった場合も切替申請が必要です。通称併記は別途証明書類が必要になるため、外務省または各都道府県パスポートセンターに事前確認してください。
本籍地変更を伴う引越し時の手続きフロー
本籍地の都道府県を変える場合、引越し(住民票異動)と本籍地変更(転籍)は別手続きです。両方が必要な場合のフローを整理します。
ステップ1: 引越し(住民票異動)
旧住所地で転出届、新住所地で転入届を提出します。これは住民票上の住所を異動する手続きで、本籍地は変わりません。詳細は転入届の出し方を参照してください。
ステップ2: 本籍地変更(転籍届)
本籍地を変えたい場合、転籍届を提出します。提出先は現本籍地の市区町村役所、新本籍地の市区町村役所、または住所地の市区町村役所のいずれかから選べます。届出人は戸籍の筆頭者と配偶者です。2024年3月1日以降、戸籍の届出時に戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)を添付するのは原則不要になりました(コンピュータ化されていない戸籍などでは添付を求められる場合があります)。転籍届そのものの手数料はかかりません(無料)。同一戸籍内の全員の本籍が変わります。
ステップ3: パスポート切替申請
本籍地の変更が新しい戸籍に反映された後、住所地の都道府県パスポートセンターまたは市区町村窓口で申請します。交付までの日数は都道府県や時期により幅があり、東京都では申請日を含め最短9営業日、繁忙期はさらにかかることがあります。
記載事項変更には2つの申請方法がある
本籍地の都道府県が変わった場合や氏名が変わった場合の申請には、2つの方法があります。どちらを選んでも新しいパスポートが発行されますが、有効期間と費用が異なります。渡航予定や残っている有効期間に応じて選びます。
| 方法 | 残存有効期間同一旅券 | 新規発給(切替) |
|---|---|---|
| 有効期間 | いまのパスポートの残り期間を引き継ぐ(延びない) | 新たに10年(18歳未満は5年)になる |
| 手数料の目安 | 比較的安い(下表参照) | 新規発給と同額(下表参照) |
| 向いている人 | 有効期間がまだ十分に残っている方 | 残り期間が短い方・この機会に10年に更新したい方 |
以前は「訂正新規申請」と呼ばれた方法が新規発給にあたります。残存有効期間同一旅券を選べるのは18歳以上の方で、18歳未満は5年用の新規発給のみとなります。どちらの方法でも、変更後の戸籍が反映されていることが前提です。
切替申請の必要書類と費用
住所地の都道府県パスポートセンター、または旅券窓口を設置する市区町村役所で申請できます。
必要書類
- 一般旅券発給申請書(残存有効期間同一旅券用または新規発給用。窓口またはオンライン申請)
- 戸籍謄本(または戸籍全部事項証明書)1通(発行から6ヶ月以内。本籍地変更・氏名変更の場合は変更後の新戸籍)
- パスポート用写真1枚(縦4.5cm×横3.5cm・6ヶ月以内撮影・無帽・無背景。オンライン申請では規格に沿った顔写真データ)
- 本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカード等)
- 有効中のパスポート
- 住民票の写し(住所地以外の都道府県で申請する場合など)
手数料(2026年7月1日改定・東京都の例)
手数料は「国の手数料」と「各都道府県の手数料」の合計で、都道府県の手数料部分は地域によって異なります。下表は東京都の窓口申請の例です。オンライン申請では都道府県の手数料が数百円安くなる場合があります(東京都では400円)。2026年7月1日の改定で成人(18歳以上)の5年用旅券は廃止されました。
| 区分 | 国の手数料 | 都の手数料 | 合計(窓口) |
|---|---|---|---|
| 10年用(新規発給・18歳以上) | 7,000円 | 2,300円 | 9,300円 |
| 5年用(新規発給・18歳未満) | 2,500円 | 2,300円 | 4,800円 |
| 残存有効期間同一旅券(18歳以上) | 3,500円 | 2,300円 | 5,800円 |
上表は改定日時点で確認した東京都の例です。実際に申請する際は、外務省およびお住まいの都道府県の公式ページで最新の金額を必ずご確認ください。
所要日数
交付までの日数は都道府県や時期によって幅があります。東京都では2026年7月時点で申請日を含め最短9営業日、手数料改定直後や引越しシーズン(3〜4月)・夏休み(7〜8月)はさらに時間がかかり、3週間〜1か月程度を見込む案内も出ています。海外渡航の予定がある場合は早めに申請し、申請先の都道府県が示す交付予定日を必ず確認してください。受領時は本人が窓口へ来庁するのが原則で、代理人受領はできません。
切替申請とオンライン申請の使い分け
マイナポータルを経由した一般旅券のオンライン申請は、2025年3月24日から全都道府県で新規・切替とも利用できます。マイナンバーカードと電子証明書のパスワードがあれば、申請の一部をスマートフォン経由で完結でき、窓口での書類記入が省略されます。オンライン申請では戸籍情報がシステム連携され、多くの場合で戸籍謄本の別送が不要になりますが、審査の内容によっては追加書類を求められることがあります。
オンライン申請で省略できる工程と残る工程
- 省略可能: 申請書記入・写真の窓口提出(オンライン送信で完了)
- 省略できることが多い: 戸籍情報のシステム連携により、戸籍謄本の別送が不要になる場合がある(審査により追加提出を求められることあり)
- 残る工程: 受領は本人来庁が原則(電子化されない)
- 対象: 新規申請・切替申請(申請類型により条件あり)
都道府県ごとに対応範囲が異なるため、申請前に住所地の都道府県パスポートセンターの公式案内を確認してください。同一戸籍内に複数の申請者がいる場合(家族での申請)は、窓口対応の方が手続きが速いこともあります。
海外渡航前のチェックリスト
引越し後に海外渡航する予定がある場合、パスポートの記載事項とその他必要書類を出発前に確認してください。
- パスポートの氏名・本籍地(都道府県)・生年月日が現状と一致しているか
- 残存有効期間が渡航先の要件を満たしているか(多くの国で6ヶ月以上必要)
- (所持人記入欄がある2020年2月3日以前発給の旅券のみ)記入欄の住所を新住所に書き換えたか(任意)
- マイナンバーカードまたは運転免許証など別の本人確認書類の住所変更を済ませたか
- 海外旅行保険・クレジットカード・銀行口座の住所変更を済ませたか
よくある質問
パスポートに現住所は印字されている?
パスポートには氏名・本籍地(都道府県)・生年月日・性別・有効期間・顔写真が記載されますが、現住所は印字されません。所持人記入欄に自分で住所を書き込めますが、これは緊急連絡先として任意で記入する欄で、公的に住所証明とはなりません。引越しに伴う住所変更手続きは原則として不要です。出典: 外務省 パスポート(旅券)に関するQ&A。
パスポートの切替申請が必要になるのはどんな時?
本籍地の都道府県が変わった場合、氏名が変わった場合(婚姻・離婚・養子縁組など)、通称併記の追加・変更があった場合に、有効期間内であっても新しいパスポートへの申請が必要になります。いずれも記載事項の変更によるもので、旅券法・旅券法施行規則に基づく手続きです。住所変更だけでは申請は不要です。
本籍地が同一都道府県内で市区町村だけ変わった場合は?
本籍地は都道府県単位で記載されているため、同一都道府県内で本籍地の市区町村が変わっただけでは切替申請は不要です。例えば「東京都新宿区→東京都世田谷区」の本籍地変更は切替不要、「東京都→神奈川県」の場合は切替申請が必要になります。
海外渡航前にパスポートの記載事項を再確認すべき?
渡航前に氏名・性別・生年月日・本籍地(都道府県)・有効期間を必ず確認してください。残存有効期間が6ヶ月以上ないと入国を認めない国もあります。記載事項に変更があるまま渡航すると、入国審査で身分証明書類との整合がとれず入国拒否されるリスクがあります。記載事項変更があった場合は出発前に切替申請を完了させてください。
マイナンバーカードがあればパスポート住所変更は不要?
マイナンバーカードは本人確認書類として使えますが、パスポートと相互に住所変更が連動するわけではありません。両者は別の身分証明書類です。パスポート自体に住所は印字されないため、マイナンバーカードの住所変更でパスポートの記載が自動更新されることはありません。
記載事項変更の申請にかかる費用と所要日数は?
手数料は2026年7月1日に改定されました。18歳以上の方は、有効期間を新たに10年にする「新規発給」と、いまのパスポートの有効期間を引き継ぐ「残存有効期間同一旅券」の2通りから選べ、費用が異なります(18歳未満は5年の新規発給のみで、残存有効期間同一旅券は選べません)。金額は各都道府県の手数料部分によっても変わります(例: 東京都では10年用の新規発給が窓口9,300円・オンライン8,900円、残存有効期間同一旅券が窓口5,800円・オンライン5,400円)。交付までの日数は改定の影響で従来より延び、東京都では申請日を含め最短9営業日、改定直後や繁忙期は3週間〜1か月程度かかることもあります。海外渡航の予定がある場合は早めに申請し、正確な金額と交付予定日は外務省・お住まいの都道府県の公式ページでご確認ください。
本籍の地名が市町村合併で変わった場合は手続きが必要?
市町村合併によって本籍地の市区町村名が変わっても、パスポートには都道府県名しか記載されないため、同一都道府県内の合併であれば切替申請は不要です。例えば「埼玉県浦和市」が「埼玉県さいたま市」になった場合、本籍地の都道府県は「埼玉県」のままで変わらず、パスポートの記載に影響しません。一方で「東京都→神奈川県」のように都道府県が変わる合併は切替申請が必要です。判断に迷う場合は外務省または各都道府県パスポートセンターに事前確認してください。
関連ガイドと地域別の窓口情報
本ガイドはパスポート固有の手続きに焦点を絞った全国共通版です。都道府県別のパスポートセンター・市区町村窓口の所在地は外務省サイトまたは各都道府県の旅券課ページを参照してください。引越し時の他の手続きは転入届の出し方・運転免許の住所変更・引越しチェックリストもあわせて参照してください。
出典・参考資料
- 外務省 パスポート(旅券)に関するQ&A: https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/passport/qa.html
- 外務省 パスポート申請手続き: https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/passport/
- 外務省 旅券手数料改定 関連情報(2026年7月1日改定): https://www.mofa.go.jp/mofaj/ca/pss/pagew_000001_02493.html
- 東京都 旅券(パスポート)手数料一覧: https://www.seikatubunka.metro.tokyo.lg.jp/passport/documents/0000000432
- 外務省 旅券法令: https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/passport/houkourei.html
- 旅券法(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC0000000267
- 旅券法施行規則(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/364M50000020011
- 戸籍法(e-Gov法令検索): https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000224
最終確認: 引越し総合ナビ編集部 / 2026-07-18(旅券手数料は2026年7月1日改定を反映)